という、介護職の疑問に答えます。
『リスクマネジメント』と言われるとなんとなくはイメージできるけどなかなか説明するのは難しいですよね。
本記事では介護業界ではリスクマネジメントとはどういったものなのか、どのくらい重要なのかを説明していきます。
この記事を読めば介護においてのリスクマネジメントを理解し、活かすことができます。
では早速説明していきますね。
そもそもリスクマネジメントとは?
そもそもリスクマネジメントとは何か、というのを簡単に説明しますね。
リスクマネジメントとは被害を最小限に抑えるための予防です。
例えば飲み込む力が弱まっている利用者にそのまま食事を提供すると窒息してしまう可能性がありますよね。
窒息させないためにも食べやすいサイズに切ったり、必要ならペーストを提供するなどの工夫が必要です。
この工夫が”介護事故やトラブルを未然に防いだり準備をする”リスクマネジメントになります。
リスクマネジメントが重要な理由は3つ
では次にリスクマネジメントがどのように機能するのか、なぜ重要なのかを深掘りしていきますね。
重要な理由は3つです。
- 利用者を守れる
- 職員を守れる
- 施設(組織)を守れる
順に説明していきますね。
重要な理由① 利用者を守れる
サービスの対象は高齢者なのでどうしても事故やトラブルが起こりやすいです。
リスクマネジメントは利用者の命を守ることへ繋がります。
例えばよくある介護事故の転倒においても、骨折や転んだ際の頭部への出血など考えられる怪我はたくさんあります。
また骨折をしてしまうと身動きできなくなったために、廃用症候群や認知症が進行してしまう恐れがあります。
このようにケガ以上の被害を防ぐことができるため、リスクマネジメントは利用者の安全以上のものを守ることにも繋がるため重要と言えます。
重要な理由② 自分を守れる
これは意外と見落としがちになってしまいますが、リスクマネジメントは利用者だけでなく職員を守ることにも繋がります。
暴力をふるってしまう男性利用者がいたとしたら、それを未然に防ぐために
- 暴力をふるわれないように、人の目がつくところで介助を行う
- 暴力をふるわれた時に証拠になるようにカメラを設置する
- もしもの時のために男性職員が主に対応する
などの対応策が講じれますよね。
このようにリスクマネジメントは職員(自分)を守ることもできます。
また暴力だけでなく女性介護職員の悩みである、利用者からのセクハラも未然に防ぐことにも繋がりますよね。
セクハラへの対策はこの記事をお読みください➡︎介護職員への利用者のセクハラ行為について『対処法は3つ』
また最近では理不尽な苦情やクレームをしつこく訴えてくる“モンスター家族”も問題になっています。
介護事故によってケガを防ぐことはそのような”モンスター家族”からの理不尽な要求から職員を守ることにも繋がります。
重要な理由③施設(組織)を守れる
『リスクマネジメント』とは、他の職業では経営管理手法として使われています。
そのため本質はサービス対象者(利用者)、職員(従業員)を守る=会社(施設)を守ることになります。
実際にこんな事例があります。
特別養護老人ホームで、准看護師がおやつを提供していた女性入所者(当時85)がおやつをのどに詰まらせ、1カ月後に死亡したとされる事件がありました。
しかし脳CT画像などを元に各専門医の意見を求めたところ、いずれも窒息ではなく心肺停止の原因は脳梗塞との判断でした。
ですが食事の介助中に女性に十分な注意を払わなかったなどとして、業務上過失致死の罪に問われた准看護師に、罰金20万円の有罪判決を言い渡しました。
引用元:yahooニュース
このように一見、介助者側に非がないように見えても一度訴訟問題が起きれば、職員だけでなく介護事業所への損失になってしまいます。
こういったことを受けて正しい介助を行っている証拠のために利用者の個室やトイレ、浴室以外にカメラをつける施設も増えています。
リスクマネジメントは、事業所の存続のためにも不可欠になってきています。
リスクマネジメントについて
と、いう方に後半ではリスクマネジメントの方法と注意点を説明します。
リスクマネジメントの方法
リスクマネジメントの手順は、PDCAサイクルを使うと良いと言えます。
✔️PDCAサイクルとは?
- Plan(計画) ⇒ どのように利用者に対してリスクを減らせるかを計画する
- Do(実行) ⇒計画を実行に移す
- Check(評価) ⇒実行した計画はどうだったかを評価する
- Action(改善) ⇒評価し、出た改善点を再び計画する
なぜこのPDCAサイクルを使うのがいいのかというと、利用者の状態が日々変わるからです。
利用者の状態が一日一日変わるのに利用者に対しての情報が古いままだとリスクを最小限に抑えているとは言えません。
そのため常に利用者の状態を見て、状態に応じたリスクを考えなくてはいけません。
そうして得た情報をもとに改善点を見つけ、介護事故を防いでいきます。
常に状態を把握しておくこともリスクマネジメントの重要な工程の一つになります。
リスクマネジメントの注意点
しかしリスクマネジメントを行う際に二つだけ注意点があります。
- 一人で行わない
- 過度に行わない
この二つの点に注意する必要があります。
リスクマネジメントの注意点① 一人で行わない
リスクマネジメントは一人では行えません。
なぜかというと主観による判断になってしまうからです。
下肢筋力が低下している利用者に対して
と、意見も価値観も職員によって様々です。
そのため職員間で情報交換をすることがかなり重要と言えます。
そのような時に便利なのがヒヤリハット報告書です。
事故を未然に防ぐために使われるヒヤリハット報告書ですが、これを使い職員同士の価値観を共有しあい、話し合った結果を利用者に提供することで、リスクを軽減することに繋がります。
ヒヤリハット報告書はこの記事で説明しています➡︎ヒヤリハット報告書を書くコツは3つ
リスクマネジメントの注意点② 過度に行わない
ですが何でもかんでもリスクを防げばいいというものではありません。
あまりにも行き過ぎたリスクマネジメントは身体拘束につながる可能性が出てきてしまうからです。
組織や職員の自衛に重点を置きすぎると、利用者の尊厳を奪いかねません。
具体的には、転倒事故を避けるあまりに利用者をベッドに縛りつけたり、車椅子に体幹ベルトで動けないようにするなどですね。
利用者の行動自由度が高ければ高いほど、転倒などのリスクも高くなってしまいます。
ですがそれにばかり気を取られてしまうと、利用者を精神的に傷つけてしまうことに繋がりかねません。
そのため介護のリスクマネジメントでは、利用者の尊厳と職員や組織としての自衛とのバランスが求められます。
まとめ
介護事故は100%守れるものではありません。
介護現場には防げる事故と防げない事故に分けられます。
本当に介護事故がないようにするには極端な話、24時間利用者を監視していないといけません。
ですがそんなことは介助者も利用者ももちろん嫌ですよね。
そのため防げる事故を防ぐために知識やそれに応じた資格を得ておくことも重要です。
例えば実務者研修や介護福祉士の資格を取得するための勉強はかなり『介護』に対しての基礎知識がつきます。
介護福祉士の資格の取り方の記事はこちら➡︎介護福祉士の資格ってどうやって取るの?効率よく取る方法とは?
さらに介護の研修なども行っているので、自分とは違う観点や知識を知ることは視野を広げることにもなるため受講してみるのもいいですね。
この記事が参考になれば幸いです。
ここまで読んでいただきありがとうございました!