このような疑問に答えます。
僕は現役の介護福祉士として働いて7年目になります。Twitterかまたり(@kamatarikun)
認知症ケアの施設での勤務歴は5年ほどです。
介護現場で何かと話題となる”身体拘束”
身体拘束の定義は以下の通りです。
“身体拘束とは、他人への迷惑行為等のいわゆる問題行動などを防止するために、車いすやベッドに拘束するという、高齢者の行動の自由そのものを奪うこと”とされています。
当たり前ですがやはり相手は人間です。推奨される行為ではもちろんありません。
ですが、介護職をしていると”身体拘束”をしなくてはいけない場合が存在します。
この記事では身体拘束をしてしまう原因や、それでも身体拘束がやむを得ない場合とは何か、がわかります。
ぜひ参考にしてください。
身体拘束の具体例と原因
具体的な身体拘束の例を紹介します。
✔️経管栄養等のチューブを抜かないように、また皮膚をかきむしりすぎないように手指の機能を制限するミトン型の手袋をつける
✔️徘徊しないように椅子や車椅子、ベッドに縛り付けて抑える
✔️行動を落ち着かせる為、向精神薬を過剰に服用させる
このように身体拘束とは身体に結び付けたり、外側から鍵をかけて部屋から出れないようにする直接的行為はもちろんのこと
向精神薬を服用させ動きを鈍くさせたり、動けなくさせたりすることも身体拘束に分類されます。
ではこのような身体拘束を行なってしまう原因はなんなのか?考えられる原因は様々あります。
これは虐待や身体拘束を行ってしまっていた施設のアンケート結果です。
この中でも大きく割合を占めている
- 業務の負担が多い
- 仕事上のストレス
- 人材不足
この三つの原因に絞って順に説明していきます。
身体拘束の原因①業務の負担が多い
なぜ『業務の負担が多い』ことが虐待や身体拘束に繋がってしまうのか?
結論から言うと忙しくて利用者を一人ひとり見てられないからです。
例えば何度か転んでしまっている足腰が弱い方に対して、「もう転ばないで」といくら言っても転んでしまう時は転んでしまいますよね。
その利用者が歩いてトイレに行く際には職員が見守りや必要ならば介助をしなくてはいけません。
そのような利用者が一人、二人なら対応できます。ですが介護施設ともなるとそうはいきません。
更に職員にはそのほかに割り振られた通常の業務があります。
やらなくてはいけないことも多くなっていき大変なのに、利用者には怪我をさせないようにしなくてはならない。
こうしてどんどん手が回らなくなり結果的に負担を減らそうと身体拘束に繋がってしまうのです。
身体拘束の原因②仕事上のストレス
仕事上のストレスは立場や環境によって様々です。
自分では対応しきれないことがストレスになってしまっているケースもあります。
- 職員同士の人間関係
- 自分の考えと施設の方針が合わない
- 利用者に対するストレス
などですね。
施設内での人間関係がギクシャクしていて、自分の精神が不安定な状態なのに人の世話をしろというのも土台無理な話です。
更に自分が施設をよくしていきたい、現状を変えていきたいと意見を施設長などの上司に述べても改善されなかったり
自分の考えと施設の方針が合わないこともストレスの一因になりますね。
そうしてイライラや行き場のない感情が、自分の言う通りにならない利用者に矛先が向いてしまいます。
身体拘束の原因③人材不足
身体拘束の原因①、②の根本的な理由にもなるのがこの人材不足です。
やはり職員にゆとりがあってこそ良質なケアができます。
綺麗事に聞こえてしまうかもしれませんが、ほとんどの身体拘束が”人手不足による事故防止”という理由で行われてしまっているのが現状です。
極論を言えば足腰が弱い利用者が出歩いて転んでしまうのを防ぐなら、その利用者一人に対して一人職員がつけば話は解決します。
職員を多く配置し、利用者をしっかり見て対応をすることが身体拘束をしない理由にもなり理想の介護になります。
ですがこの記事でも言っているのですが介護業界の人手不足の理由と対策とは?『これからの未来』介護業界にはそのような人手はありませんし、到底実現しません。
なので人が足らないなら増やして丁寧なケアを行えばいい、と言うのは理想論になってしまいます。
だからと言って身体拘束をしていいとはなりませんが、身体拘束を行なっている施設にはこのような背景が存在します。
身体拘束がやむを得ない場合の条件とは
身体拘束には行うことを許可する条件があります。
厚生労働省は”緊急時にやむを得ない場合”の身体拘束を行うにあたり、以下の3つを原則としています。
身体拘束三つの原則
- 切迫性
- 非代替性
- 一時性
この三つになりますね。
※参照:厚生労働省身体拘束の考え方
切迫性とは
切迫性とは、利用者本人又は他の利用者の生命又は身体が危険にさらされる可能性が著しく高いことをいいます。
例えば点滴を入れないと本人が亡くなってしまうにも関わらず、認知症によって理解ができずに暴れてしまい点滴ができない場合などですね。
非代替性とは
非代替性とは、身体拘束その他の行動制限を行う以外に代替する介護方法がないことをいいます。
要するに身体拘束以外はもう対処のしようはない、という判断を個人だけでなく複数のスタッフで確認しなくてはならないと言うことです。
また、拘束の方法も、本人の状態等に応じて最も制限の少ない方法により行わなければならないとされています。
一時性とは
身体拘束は一時的なものであること一時性とは、身体拘束その他の行動制限が一時的であることをいいます。
本人の状態等に応じて必要とされる最も短い拘束時間を想定しなければならないというわけですね。
これも個人の判断ではなく、複数人の判断により
本人の状態を鑑みてどの程度の時間拘束すればよいのかという点を十分協議しなくてはいけません。
この三つの原則を満たした場合のみ身体拘束はやむを得ず行なって良いとされています。
またそれぞれの行なった過程及び結果を記録しておくことも義務付けられています。
この原則の他にも、身体拘束を行う際には留意事項として
- 施設全体の意思決定であることを明確にする
- 本人や家族の理解を得るため、丁寧な説明を行う
- 身体拘束に関する記録の義務付け
がありますね。
①緊急をやむを得ない場合であるとの判断は、担当スタッフ個人(又は数名)だけで行わず、施設全体の判断が行われるように、あらかじめルールを決めておきましょう。
②身体拘束を行う場合には、本人やその家族に対して、身体拘束の内容、目的、理由、拘束の時間、時間帯、期間等をできる限り詳細に説明し、十分な理解を得るよう努めることが重要です。その際には、施設長や医師、その他現場の責任者から説明を行うなども考慮しましょう。
③事業者において、緊急をやむを得ず利用者の身体を拘束して介護を行う場合には、その態様及び時間、その際の利用者の心身の状況、緊急をやむを得なかった理由を記録しなければなりません。
この記録は、行政担当部局の指導監督が行われる際に提示できるようにしておく必要があるので、施設に保存しきましょう
このように身体拘束を行う際には厳しい条件があります。
裏を返せばそれほど危険視しなくてはいけない行為だというわけですね。
まとめ
緊急時に行なっても良いとはされていますが、やはり身体拘束は人の自由を奪ってしまう行為です。
身体拘束を行うことに慣れてしまうと、感覚が麻痺してしまい身体拘束以外の選択肢を考えることを疎かにしてしまいます。
ですが自分に置き換えて考えると、わけもわからないうちに大人数に手足を縛られ自由がなくなる、というのは非常に恐ろしいことです。
今一度相手の立場になって考えることも身体拘束をしないための材料になります。
参考になれば幸いです。
ここまで読んでくださりありがとうございました!